CAR BOUTIQUE HERITAGE

NISSAN GT-R HERITAGE

ハコスカという出発点

1969年に登場した初代スカイラインGT-R(PGC10/KPGC10)、通称“ハコスカGT-R”は、日本のモータースポーツシーンを塗り替えた存在だ。

4ドアセダンをベースにしながら、レース直系のS20型 2.0L 直列6気筒DOHCエンジンを搭載。

ツーリングカーレースで連戦連勝を重ね、“GT-R”の名前に圧倒的な説得力を持たせた。

・2.0L 直6DOHC を高回転まで回し切って走る、レーシングカー直系のフィーリング

・セダンベースゆえの実用性を備えつつ、サーキットで速いというギャップ

・日本のファンに「国産でもここまでできる」という誇りを与えたモデル

SPEC

Nissan Skyline 2000GT-R (KPGC10) 主なスペック

  • エンジン: 2.0L 直列6気筒 DOHC(S20型)
  • 最高出力: 160ps/7,000rpm
  • トランスミッション: 5速MT
  • 駆動方式: FR
  • 生産年: 1969–1972年

ケンメリGT-R ─ 夢のまま終わった第二幕

2代目GT-Rとなる KPGC110、いわゆる“ケンメリGT-R”は、わずか数百台の生産で姿を消した悲運のモデルだ。

マッスルカー的なボディラインとオーバーフェンダーは迫力十分だが、オイルショックや排ガス規制の波に飲み込まれ、本格的なレース活動が行われる前に終幕を迎えてしまった。

・メカニズムは基本的にハコスカGT-Rを受け継ぎつつ、ボディは一気に近代的に

・だが時代背景により、サーキットで真価を発揮する機会はほとんどなかった

・“もし本気で走らせていたら”というロマンを今も語らせる一台

昭和の終わりに蘇った“R32 GT-R”

長い沈黙のあと、GT-Rの名前が本格的に蘇るのは1989年、R32 スカイラインGT-Rの登場を待たなければならない。

グループAレースで勝つため、“最初から4WDターボで作る”という前提で生み出されたマシンは、まさにサーキットのためのホモロゲーションモデルだった。

RB26DETT 2.6L 直6ツインターボ + ATTESA E-TS の4WDシステム

・電子制御とメカニズムを組み合わせた高度なトラクションコントロール

・グループAレースで“勝ちすぎてしまった”がゆえに、カテゴリー自体を変えてしまった存在

SPEC

Nissan Skyline GT-R (R32) 主なスペック

  • エンジン: 2.6L 直列6気筒 ツインターボ(RB26DETT
  • 最高出力: 280ps/6,800rpm(自主規制値)
  • トランスミッション: 5速MT
  • 駆動方式: 電子制御4WD(ATTESA E-TS
  • 生産年: 1989–1994年

R32 GT-R は、その圧倒的な速さから海外メディアに“ゴジラ”と呼ばれ、国産スポーツカーのイメージを一気に塗り替えた。

R33 / R34 ─ 熟成と集大成

R33 GT-R はホイールベースの延長とワイドトレッド化により、高速安定性と実用性を高めたモデルだ。

R32と比べると“重くなった”という声もあるが、実際にはシャシー剛性の向上と電子制御の進化により、懐の深いグランドツアラーとしての側面が強くなっている。

続く R34 GT-R は、スカイラインGT-Rとしての集大成ともいうべき存在だ。

コンパクトなボディに、RB26DETTの熟成形と改良されたATTESA E-TS Pro、マルチファンクションディスプレイなど当時最先端の情報表示システムを搭載。

サーキットでも街乗りでも“濃い時間”を提供してくれる。

SPEC

Nissan Skyline GT-R (R34) 主なスペック

  • エンジン: 2.6L 直列6気筒 ツインターボ(RB26DETT
  • 最高出力: 280ps/6,800rpm(自主規制値)
  • トランスミッション: 6速MT
  • 駆動方式: 電子制御4WD(ATTESA E-TS Pro)
  • 生産年: 1999–2002年

NISSAN GT-R (R35) ─ スカイラインから独立した“世界基準”

2007年、GT-Rはついにスカイラインの名前から独立し、“NISSAN GT-R”として生まれ変わる。

VR38DETT 3.8L V6ツインターボ、デュアルクラッチトランスミッション、トランスアクスル4WDという完全新設計のパッケージは、もはや従来の国産スポーツカーの枠を超えたものだった。

・最高出力は世代を重ねるごとに向上し、600ps級まで到達

・電子制御サスペンションと高度な4WD制御により、“誰が乗っても速い”領域へ

・一方で車重やサイズは大きくなり、あくまで“ハイパフォーマンスGT”としての性格が強い

SPEC

Nissan GT-R (R35) 初期型 主なスペック

  • エンジン: 3.8L V型6気筒 ツインターボ(VR38DETT
  • 最高出力: 480ps/6,400rpm(年式により変動)
  • トランスミッション: 6速DCT
  • 駆動方式: 電子制御4WD
  • 生産開始: 2007年〜(年次改良を重ね継続)

GT-Rという名前が持つ“温度”

スカイラインGT-Rの時代、GT-Rはあくまで“セダン/クーペの高性能グレード”だった。

家族を乗せて出かける日常と、サーキットでタイムアタックを楽しむ非日常。

そのどちらにも一台で応えてくれる、少し無理をしてでも所有したくなる相棒。

それが GT-R という名前に宿る温度だった。

NISSAN GT-R (R35) になってからは、そのレンジが一気に世界へと広がった。

ニュルでのラップタイム、海外メディアのスーパーカー比較企画。

指標は“世界基準”に切り替わり、GT-Rは日本車という枠を超えた存在になった。

それでも、国産スポーツを愛する人たちが GT-R に惹かれるのは、スペック以上に「地に足の着いたヒーロー感」があるからかもしれない。

洗車機の前で待つ時間、コンビニの駐車場でふと振り返ってしまうリアビュー。

そんなごく普通の日常のなかで、“ゴジラ”と暮らしている実感を与えてくれるからこそ、GT-Rという名前は今も特別なのだ。