RX-7という存在

RX-7は、数ある国産スポーツカーのなかでもひときわストイックな存在である。

小さく軽いロータリーエンジンをフロントミドシップ気味に搭載し、コンパクトなボディと組み合わせることで、コーナリングの気持ちよさと応答性を徹底して追い求めたクルマだ。

ボンネットを開ければ、前輪軸よりも後ろにエンジンが収まっている様子が一目でわかり、その思想はどの世代にも共通している。

大人4人が快適に乗れることよりも、1人または2人が存分に走りを楽しめることを優先したパッケージング。

RX-7は、そうした選択を真正面から行った稀有な国産スポーツなのである。

初代SA22C ─ ライトウェイトロータリーの衝撃

1970年代後半に登場した初代RX-7(SA22C)は、当時としては斬新なスペシャリティクーペだった。

オイルショックを経て大排気量エンジンへの逆風が吹くなか、コンパクトで高回転を得意とするロータリーエンジンは、新しいスポーツカーの可能性として注目を集めていた。

エンジンを車体中央寄りに配置したFRレイアウトと、軽量なボディ、そして低い着座位置が生み出す一体感は、それまでの国産車にあまりなかった感覚だったと言われる。

直線番長ではなく、ワインディングロードでリズムよくコーナーをつないでいくことに喜びを見出すドライバーにとって、SA22Cは理想的な相棒だった。

今日から見ればクラシックカーの領域に入りつつあるが、そのシンプルな構成と軽さは、いまなお多くのファンを惹きつけている。

FC3S ─ ハイソカー時代のGT志向とターボ化

1980年代半ばから後半にかけてのFC3S型RX-7は、世の中のハイソカー志向とともに、ややGT寄りの性格を帯びた世代である。

ボディはひと回り大きくなり、内装の質感も向上。

ターボ付きロータリーエンジンは中低速トルクを増し、高速道路での巡航性能と余裕を手に入れた。

とはいえ、基本にあるのはあくまでライトウェイトFRの思想で、足回りやステアリングの味付けは「走るためのクルマ」であることを忘れていない。

グループAレースやラリーでの活躍も、この世代のRX-7のイメージを大きく形づくった。

ハイソカー的な雰囲気とピュアスポーツ的な素性が同居するFC3Sは、まさに80年代らしいRX-7と言えるだろう。

FD3S ─ 軽量FRとサーキット志向の集大成

1990年代に登場したFD3S型RX-7は、多くのファンにとってRX-7の代名詞ともいえる世代だ。

ボディは再びコンパクトかつワイドになり、徹底した軽量化と低重心化によって、コーナリング性能は大きく向上した。

ツインターボ化されたロータリーエンジンは鋭いレスポンスと高い出力を両立し、サーキットや峠道での速さは国産スポーツのなかでもトップクラスと評された。

空力を意識した流麗なボディラインや、コクピットライクな運転席の雰囲気も含め、FD3Sは「純粋なスポーツカー」として設計されたことが伝わってくる。

特別仕様のスピリットRは、その集大成としてホイールやブレーキ、シートなどが専用チューンされ、多くのファンが憧れる存在となった。

メカニズムと走りのキャラクター

歴代RX-7に共通するのは、コンパクトなロータリーエンジンを活かしたパッケージング思想だ。

エンジンを前車軸より後ろに搭載するフロントミドシップレイアウトに近い配置とすることで、前後重量配分を理想に近づけ、旋回時の応答性を高めている。

SA22Cでは素直で軽快なハンドリング、FC3Sではやや落ち着きのあるGT的な動きとターボパワーの余裕、FD3Sではシャープでサーキット志向の挙動と、世代ごとに味付けは異なるものの、いずれも「ドライバーが積極的に操って楽しいFR」を目指している。

ロータリーエンジン特有の滑らかな回転フィールと、回転数を上げていくほどにパワーが湧き上がる感覚は、ピストンエンジンとはまた違ったスポーツドライビングの世界を見せてくれる。

現代の視点で見るRX-7

現代のスポーツカーと比較すると、RX-7は数値上のスペックよりも「軽さ」と「人間との距離感」で勝負するクルマであることがよくわかる。

電子制御デバイスに頼らず、アナログなフィードバックを大切にする設計思想は、特にFD3Sで色濃く表れている。

ボディサイズは今日の基準からしてもコンパクトで、見切りもよく、ワインディングやサーキットだけでなく都市部でも扱いやすい。

ただし、静粛性や乗り心地、環境性能という観点では最新のスポーツカーに及ばない部分もあり、より「趣味性」が強い立ち位置にあると言えるだろう。

そうした割り切りを理解したうえで選ぶなら、RX-7は今なお唯一無二の楽しさを提供してくれるスポーツカーである。

ライバルとの比較で見えるRX-7の個性

RX-7の歴代ライバルとしては、日産フェアレディZ、スカイラインGT-R、トヨタ・スープラ、さらにはポルシェ944や911などが挙げられる。

大排気量エンジンと重量級シャシーでパワーを受け止めるGT-Rやスープラに対し、RX-7はあくまで「軽さ」と「コンパクトさ」で勝負するスポーツカーだった。

フェアレディZと比べても、よりロータリーエンジンの特性を活かした高回転志向のキャラクターが強く、サーキットでのタイムアタックや峠道でのタイトなコーナーがよく似合う。

輸入車勢と比べれば、コストパフォーマンスや扱いやすさ、チューニングの自由度などで優位に立つ場面も多く、RX-7は「自分で操って仕上げていくスポーツカー」として選ばれてきた。

RX-7を選ぶということ

RX-7を選ぶというのは、ロータリーエンジンという少数派の道をあえて歩むことでもある。

慣れ親しんだピストンエンジンとは違うフィーリングを受け入れ、その特性を理解しながら付き合っていく覚悟が求められる一方で、その先には他では得がたい一体感と高揚感が待っている。

SA22Cの素朴なライトウェイト感に惹かれるのか、FC3Sの80年代的GTムードを楽しむのか、FD3Sの研ぎ澄まされたサーキット志向に心を奪われるのか──いずれを選ぶにせよ、オーナーの生活や価値観には「走りを中心に据える」という小さな決意が必要だ。

維持費やランニングコストの具体的なイメージについては、GUIDE「マツダRX-7の維持費とランニングコスト完全ガイド」も参考にしてほしい。

グレードや年式ごとの選び方、予算感の目安については、GUIDE「マツダRX-7中古の選び方と失敗しないポイント」で詳しく解説している。

よくあるトラブル事例や、長く付き合ううえでの覚悟ポイントについては、COLUMN「マツダRX-7のよくあるトラブルと維持の覚悟ポイント」を読んでから考えたい。

合理的な答えだけでは辿り着けない場所へ、RX-7はきっとあなたを連れていってくれるはずだ。